プロジェクトレポート_80_2「用途ごとに区分所有者が異なる!民間事業者5社による共同開発事業をCMrが徹底サポート」

プロジェクトレポート

project「横浜シンフォステージ」開発プロジェクト

用途ごとに区分所有者が異なる!民間事業者5社による共同開発事業をCMrが徹底サポート

  • ポイント1 一気通貫! CMrをワンストップ窓口としたコンソーシアムの意思決定フローの確立
  • ポイント2 細かすぎる!区分所有建物における煩雑なコスト変動を精緻にマネジメント
押田 彩夏
押田 彩夏
  • 株式会社三菱地所設計
    コンストラクションマネジメント部
    コンストラクションマネージャー
    押田 彩夏

テーマ1発注者がCMrに求めたことは?

本PJは、みなとみらい21中央地区における、民間事業者5社(大林組、京浜急行電鉄、日鉄興和不動産、ヤマハ、みなとみらい53EAST合同会社)による共同開発事業である。開発建物「横浜シンフォステージ」は、地上30階、総延床面積18万㎡を超える、オフィス・ホテル・店舗等にて構成される大規模複合施設である。さらには、区分所有建物であることから、建物内に共用部・専有部が存在し、用途で区分される専有部ごとに、区分所有者およびPJ関係者が異なるという特徴がある。CMrは、民間事業者5社(以下コンソーシアム)によるPJ推進における、量的・質的マンパワーの補充を行うべく、本プロジェクトへの参画を求められた。

テーマ2CMrが立てた目標は?

横浜シンフォステージには、共用部・専有部合わせて10種類を超える区分所有種別が存在した。共用部に関しては、区分所有者間でも異なる要望を持っている場合がある。この課題を解決するためにCMrは、コンソーシアムの要望を「公平」に施設計画に盛り込んだ上で、各所有区分が事業予算内で竣工を迎えることをプロジェクト目標として定めた。また、PJ全体のコスト管理を任されていたため、迅速かつ正確な対応を行うことでコンソーシアムから信頼を得ることを心がけた。コンソーシアムだけでなく、設計者、施工者、その他のPJ関係者に対しても、中立の立場で「公正」を保ちマネジメントを行うことをCM業務目標として定めた。

テーマ3CMrがとった手法は?

大規模複合施設ならではの情報マネジメント

大規模複合施設であることから、コンソーシアムの意思決定機関であるコンソーシアム定例、総合定例、設計定例の他、用途ごとに多数の分科会が設定されていた。分科会には各用途の関係者のみが出席していたため、全体共用部に影響を及ぼす課題が、分科会にて議題にあがる場合があった。CMrはPJ全体の動きを把握し、抜け漏れなく情報管理するため、全会議に出席しモニタリングを実施した。全体共用部に関係する分科会の議題については、CMrが課題を抽出し、設計定例で関係者全体へ情報共有することで、全員が議論に参加できるよう工夫した。

定例会議以外にも、適宜CM個別打合せを設定し、各社の懸念に丁寧に対応したことが、コンソーシアムからの信頼につながったと感じている。

オフィス・ホテル・店舗等にて構成される大規模複合施設「横浜シンフォステージ」
オフィス・ホテル・店舗等にて構成される大規模複合施設「横浜シンフォステージ」
10種類を超える区分所有(共用部・専有部)種別
10種類を超える区分所有(共用部・専有部)種別

コンソーシアムによる共同開発事業ならではの意思決定フロー

プロジェクト関係者が多く、コンソーシアムと設計施工者間における情報・資料のやりとりが煩雑になることが懸念された。そのため、工事施工段階の開始と同時に、コンソーシアムからの要望事項、設計施工者からの書類の発行は全てCMrに窓口を一本化することにした。窓口をまとめるだけでなく、CMrからの情報伝達は全てクラウドサービスに保存されたデータ「作業依頼シート」上にて行うことで、抜け漏れなく履歴を管理した。

 設計変更に関わるコンソーシアムの意思決定フローは、以下の通り:

  1. ①設計者作成の図面、施工者作成の見積書をCMrが受領
  2. ②CMrが図面・見積書の内容を確認し、各社負担金額(概算)を算出
  3. ③図面・見積書・各社負担金額(概算)をCMRがコンソーシアムへ提出
  4. ④コンソーシアム定例(隔週開催)にて、設計変更項目の採否を決定
    ※設計変更期限はCMrからコンソーシアムへ2ヵ月前からリマインドを継続
  5. ⑤採用決定した設計変更項目を「作業依頼シート」にてCMrから設計者へ伝達
  6. ⑥設計者から施工者へ設計変更指示書を発行、施工者が工事着手

ポイントは、設計変更項目が複数の所有区分に関係する場合もあるため、施工者より受領した見積書の内容を一項目ずつ確認し、CMrが各社の負担金額(概算)を独自に算出したことである。見積書受領から、短期間で採否判断が必要となることが予想されたため、着工時に、各社負担金額(概算)をもってコンソーシアムは意思決定を行うように、施工者は工事着手できるようにフローを確定した。

区分所有建物ならではのコストマネジメント

実施設計完了後の工事請負契約締結に向けたコスト協議に際し、工事総額予算だけでなく、各社の事業予算達成に向けたコスト管理が必要不可欠であった。設計者・施工者から提出されるVE・CD効果額は、事業者ごとに按分されておらず一括金額であった。CMrは150項目を超えるVECD項目を、事業者ごとに按分して積み上げることで、各社へのVE・CD効果額を明確化した。各社の事業予算を達成するために、設計者・施工者を含む関係者へ、事業者ごとに更なるVE・CDが必要な金額を提示した。設計者・施工者と共に、追加のVECD検討を実施することで、各社事業予算内で着工を迎えることができた。

工事施工段階に入ってからは、前述の設計変更に関わるコンソーシアムの意思決定フローの中で、CMrが各社負担金額(概算)を算出する役割を担った。各社負担金額(概算)は、契約変更手続きに用いる金額とするために、金額算出の根拠をコンソーシアムに示した上で、定期的に精算金額へ置き換えを行った。工事期間中に提出された設計変更見積書250項目超の各社負担金額(精算)は、「区分所有コスト一覧」で常に管理し続けた。このように、CMrが区分所有建物特有の煩雑なコスト管理を一手に引き受けることで、コンソーシアム各社は他の開発業務に集中することができたのではと考えている。また、民間事業であるため、工事期間中の新規所有区分追加や、按分比率変更が生じる可能性があった。それらを容易に反映できるような「区分所有コスト一覧」を作成し、竣工直前の変更依頼にも短期間で対応することができるよう工夫も行った。

テーマ4発注者の評価は?

 2024年5月に開業した「横浜シンフォステージ」は周辺地域に賑わいをもたらし、新たな人の流れを創出している。CM業務に関しても、コンソーシアム各社からは「情報共有が非常に明確かつ円滑に行われ有難かった。中立な立場で事業を俯瞰して意見がもらえて、とても参考になった。」と評価をいただいた。

プロジェクトデータ

<プロジェクト情報>

  • 【名 称】「横浜シンフォステージ」開発プロジェクト
  • 【所在地】神奈川県横浜市
  • 【種 別】新築
  • 【CM業務委託者】株式会社大林組、京浜急行電鉄株式会社、日鉄興和不動産株式会社、ヤマハ株式会社、みなとみらい53EAST合同会社
  • 【CMr】株式会社三菱地所設計
  • 【CM業務契約期間】2019年4月~2024年3月
  • 【CMrの選定方法】プロポーザル
  • 【CMrの参画時期】基本設計段階、実施設計段階、工事発注段階、工事段階
  • 【設計・施工の発注形式】設計施工一括
  • 【設計者の選定方法】特命随意契約
  • 【施工者の選定方法】設計施工一括による特命
  • 【設計・施工者の選定時期】事業構想段階

<CM業務内容>

  • 【全般】発注者の目標・要求の確認と更新、プロジェクトの推進と管理、プロジェクト構成員の役割分担の明確化と更新、プロジェクト情報管理、CM業務報告書の作成
  • 【基本設計でのマネジメント】実施設計への支援と確認、実施設計図書等の内容の確認、見積内容確認
  • 【実施設計でのマネジメント】実施設計への支援と確認、実施設計図書等の内容の確認、見積内容確認
  • 【施工でのマネジメント】工事施工、コンソーシアム5社によるプロジェクトマネジメント支援、見積内容確認