CM普及を目指した実態把握のための調査結果報告
一般社団法人 日本コンストラクション・マネジメント協会 会長 川原秀仁
国内調査研究委員会 委員長 小倉 哲
このたび、国内調査研究委員会が実施した会員所属企業等へのアンケートにより市場調査結果がまとまりました。
・2022年3月末において、CCMJ資格者を有する会社 全361社と、土木系CM業務の実態をより把握するため、(一社)建設コンサルタンツ協会 技術部会マネジメントシステム委員会 PM専門委員会の協力を得て、同所属企業15社にアンケートを送付。(2018年度・2019年度は、CCMJ資格者を2名以上有する会社のみ対象)
・CM業務を受託している会社は、昨年度の37社よりも多い41社から回答を得た。
・回答社全体のCCMJ資格者数合計は792名で、2022年3月末資格者数 全1,311人のうち、約6割の資格者が所属する企業が行う2,200件以上(売上高で約350億円超)の業務についてデータを取得。
・2018年度からの調査項目を継続しつつ、5ヶ年分のデータが蓄積されたため、分析項目を追加。
近年、日本国内においてCMの認知度が高まり、CMを活用する事業が増えている状況においてCM市場規模を把握する客観的な統計が求められています。そこで、官民問わず様々な発注者や広く建設業界関係者に対して、CM業務の実情を正しく認知してもらうために2018年度より継続的なアンケート調査を実施しています。
今後も毎年調査を実施することにより継続的な市場動向の把握を行います。
アンケート結果から読み取れる特徴は以下の通りです。
① CM業務売上高が増加・同等とした会社が約8割。アフターコロナや社会情勢の変動期に
おいてもCM業務の需要が継続。継続比較可能な会社において、CM業務売上高が前年比
6~9%増大
CM業務を受託している会社は41社でした。CM業務の売上高は前年度よりも増加又は同等とする会社が約8割でした。
※「CM業務の売上高」とは、ピュアCM業務の報酬を示しています。エンジニアリングレポート作成、企画段階のボリュームスタディ業務等、CM業務に付帯する調査は含めていますが、請負工事、設計業務、監理業務、測量等の調査業務、不動産取引等の仲介手数料などは含まない金額を調査しています。
CM業務の売上高を、経年比較可能な会社を比べた場合
1) 今年度(2022)・昨年度(2021)の両方に回答した18社で、前年比約6%
2) 2018~2022年度の5ヶ年全てに回答した9社のみを集計した場合、前年比約9%の増加が見られました。
2018~2022年度の5ヶ年全てに回答した9社のCM業務売上高合計は2022年度において約150億円で、全回答社の約4割超を占めています。
② 官庁・公共団体発注のCM業務が増大
CM業務の売上高の約8割は民間発注であるものの、官庁・公共団体発注のCM業務売上高は、経年比較可能な会社を比べた場合、前年比で27~29%増大しています。
③ 「事務所」が最も多く、次いで「文化・スポーツ施設」「生産・倉庫・物流施設」が多い。
「文化・スポーツ施設」は、5年間でCM業務売上高が6倍超に拡大
「生産・倉庫・物流施設」は、直近3年間で約6割増大
建築分野では、5年間連続で「事務所」用途が最も多く、「事務所」「文化・スポーツ施設」「生産・倉庫・物流施設」の3分野で、建築分野全体の売上高(「建築その他」を除く)の6割超を占めます。(昨年度までは、「庁舎(公共)」と「事務所(民間)」を一括りで調査していましたが、本年より分割して調査)
「文化・スポーツ施設」は、2018~2022年度の5年間で6倍超に拡大し、「生産・倉庫・物流施設」は2020~2022年度の3年間で約6割増大しています。
④ 九州ではCM業務が5年間継続して増加
地域別では、東京での売上高が最も多く、近畿、関東(東京以外)のCM業務売上高が続き、その3地域で全体の6割超を占めます。九州では5年連続で継続的に増加しています。
⑤ 従来のCM業務の領域を超えて、広く社会課題に対応する業務に注目している会社が多数
「ESG/SDGs経営」「オフィスの働き方改革」「脱炭素取り組み」「ZEB等補助金申請取得」等、従来のCM業務の領域を超えて、広く社会課題に対応する業務に注目している会社が多いことが分かりました。「ESG/SDGs経営」については業務として受託している会社は少ないものの、「オフィスの働き方改革」「脱炭素取り組み」「ZEB等補助金取得」等は既に業務として受託している会社も多い結果となりました。