巻頭言 vol82

巻頭言

日本型CMの進化とグローバル・スタンダードの融合 ―3委員会の活動を通じて―

常務理事 Turner & Townsend 株式会社 
代表取締役 
梶浦 久尚

【はじめに】
日本CM協会において国内、海外、デジタルの3つの調査委員会を統括する常務理事として、また日々ターナー&タウンゼントの代表として実務の最前線に立つ中で、今ほどCM(コンストラクション・マネジメント)の真価が問われている時期はないと感じております。建設コストの高騰、働き方改革に伴うリソース不足、そして急速なDXの進展。我々を取り巻く環境は激変していますが、これは同時に、透明性の高いマネジメントを標榜するCMが、建設産業の主役へと躍り出る大きな好機でもあります。

大きな改訂点としては、第3章に「運営・管理マネジメント」と「環境マネジメント」を新たに加えました。地方自治体におけるPPP導入の促進やESG投資の浸透など、施設の長期運営を見据えた事業の重要性などを背景に、CMrが担うべき役割が設計・施工段階にとどまらず、運営・管理や環境へと広がっている現状をふまえた内容となっています。またプロジェクト実施方式については、第3版では設計施工分離方式、DB方式、ECI方式の3方式であったものが、PFI、施設管理付設計施工一括方式、指定管理者制度を追加し、CMrが検討する対象となる方式を拡張しました。

【3委員会の有機的連携がもたらす価値】
 私が担当する3つの委員会は、現在、個別に活動しておりますが、今後は相互に深く関連し合い、より付加価値の高い調査研究を行うことを目標としております。現在の「国内調査委員会」では、日本のCMの普及率を市場調査を通じて観測しています。年次経過を確認することで、市場の変化をとらえつつ、日本独自の商習慣や法規制に即したCMの普及と深化を追求していきたいと思います。一方で「海外調査委員会」は、日本と異なる商習慣やプロジェクト運営手法を調査し、日本のCMのグローバル・スタンダードへの進化を目的にしています。これは決して日本の慣習を否定するものではありません。むしろ、外資系クライアントが日本市場に求める「説明責任」や「ガバナンス」といった視点を、いかに日本の現場へ適応させ、すべてのクライアントに対し、日本のCMが満足のいくサービスを提供できるための「橋渡し」の役割を担っています。そして、この両者を繋ぐ強力なエンジンとなりうるのが「デジタル調査委員会」です。特に今年からはAIの活用に関し調査をすることで、単なる効率化のツールにとどまらず、大型案件の複雑な工程やコスト構造を可視化し、海外基準のデータ管理を可能にする、いわば「共通言語」としての役割をどこまで担えるのかを今後しっかりと考えていきたいと考えています。これら3つの視点を有機的に統合することで、日本型CMは次なるフェーズへと進化できると思っています。

【プロフェッショナルとしての矜持】
 CMマネジャーに求められるのは、単なる調整役としての動きではありません。設計や施工の細部に没入しすぎるのではなく、プロジェクト全体の「経営」を司る俯瞰的な視点こそが重要です。私自身、英国に本社を置く企業の代表として日々痛感しているのは、クライアントが真に求めているのは「専門家としての確固たる提言」であるということです。 そしてその提言はデータや経験から生まれてくるものであり、日本の労働法や独自の技術力を背景に持ちつつ、グローバルに通用する「書面によるエビデンス管理」や「リスクの事前察知」を徹底することが重要だと考えます。この「守り」と「攻め」のマネジメントを高い次元で両立させることこそが、現在の日本市場で最も必要とされているプロフェッショナリズムです。

【結びに代えて】
 我々CM協会の使命は、会員各社が切磋琢磨し、業界全体のレベルを底上げすることにあります。次世代を担う若手CM・PMたちが、この職能に誇りを感じ、自らのキャリアを世界基準で描けるような土壌を築いていきたいと考えております。新卒育成からデジタルシフト、そしてグローバル展開まで、協会活動と実務の両輪を回しながら、皆様と共に建設産業の明るい未来を切り拓いていく所存です。