座談会

日本コンストラクション・マネジメント協会 創立20周年記念 座談会

̶̶日本CM協会20周年記念誌を作成するにあたり、記念事業委員会では2つの座談会を企画しました。
1つはこれからのCM業界を担っていく若手のCMrの皆さん、もう1つは豊富な経験をもち今のCM業界を支えるシニアのCMrの皆さんにお話をうかがいます。この2つの座談会を通して、CMrは幅広い年齢の方たちが、それぞれのもつ力を発揮し輝ける職能であることを、多くの方に知っていただく機会になると考えます。
司会は、会員であり編集者の真部保良(まなべやすお)さん(グローカルメディア)にお願いしました。

参加者

西村美星(にしむら みほし)

西村美星 (にしむら みほし)

㈱山下PMC

大学卒業後、山下PMCに入社。放送局舎、CREの発注者支援、プラント開発や大規模イベントのCM/PM等を担務。

時田海士郎(ときた かいしろう)

時田海士郎 (ときた かいしろう)

㈱アクア

大学卒業後、設計事務所に勤務。2020年1月、アクアに入社。エンタメ・オフィス・ホテル等のCM業務を担当。

押田彩夏(おしだ あやか)

押田彩夏 (おしだ あやか)

㈱三菱地所設計

2018年、9年ぶりのCM部新卒採用にて入社。研究施設、物流倉庫、庁舎等の CM 業務を担当。

吉本圭二(よしもと けいじ)

吉本圭二 (よしもと けいじ)

日建設計コンストラクション・マネジメント㈱

2013 年入社。現在は CM 業務と、新規事業の開発チームの主宰を兼任。趣味で管弦楽団を運営している。

CMrとしてのキャリア

最初に、皆さんがされているCMの仕事について、具体的にお話しください。

押田

私は新卒で三菱地所設計CM部に入って今年で3年目です。今日ここにいらっしゃる私以外の方々は、専業のCM会社に在籍されているのに対して、当社は設計事務所なので、社内におけるCMの立ち位置が少し違うのかと思います。入社1年目のタイミングで初めて担当したプロジェクトが、今年これまで2件、4月にもう1件竣工します。ようやく1つの仕事をやり遂げたと感じています。

これまで物流倉庫や企業の本社ビル、学校や庁舎などいろいろな用途のプロジェクトをやらせていただいています。プロジェクトによってそれぞれに固有の課題や必要な知識があり、とりあえずは吸収しようとやってきた3年でした。

時田

私は中途採用でアクアに入社しました。前職は、設計事務所2社とその2社の間に東日本大震災の震災復興関連の業務で行政機関にいたことがあります。社会人になって8年間、基本的には建築設計をやっていました。

アクアに入ったのは昨年の1月末で、2月から2年目に入りますのでCM業務はまだ1年しかやっていません。アクアは主に建設コストに関わる業務、さらに構造・設備等の詳細内容に踏み込んだ技術的な支援をアピールポイントにしていまして、基本的にはコストを主軸にさまざまなマネジメント業務を行っています。CM業務としては、企画段階のコストやスケジュールについて発注者への助言、基本計画から工事段階においての設計、または工事のモニタリングとコスト・マネジメント、あとは建物の中長期修繕計画等のサポートもさせていただいています。

次の西村さんは、今回日本CM協会20周年記念のキャッチフレーズ「発注者の一番近くにCMrがいます」を考えられた方です。

西村

私は学部卒で山下PMCに入社して5年目です。これまで企画段階から設計、工事段階と、ひと通りのフェーズでCMをやらせていただいています。

用途としては、複合ビルや本社ビル、放送局、あとはプラント関係の企画などがあります。同時にいろいろなフェーズのプロジェクトを複数行うことが、当社のスタンダードになっています。直近の主な業務としては、大阪万博のCM/PM業務、あとは都内の再開発のプロジェクトです。両方とも今は企画段階であり、設計者選定の段階と、再開発の方は行政協議や地域のコンセンサスを取っていく段階で携わらせていただいています。

吉本

私は入社して7年目ですが、日建設計コンストラクション・マネジメント(以下、NCM)は入社して3年間は日建設計の設計部と監理部で研修がありますので、NCMでCMの仕事をしているのは約4年です。

NCMでは改修・新築を問わず発注者の困りごとに対してお応えするということで、発注の補助や中長期保全計画策定などのライフサイクルの話、施設のコンセプトづくりのお手伝いなど、いろいろな業務をしています。また、社内で新規事業をつくる部署があって、そこで活動をしています。例えばBIMを利用して発注者が建設プロジェクトにどう生かせるのか、CMとしてどのようにデジタルサービスを構築していくのかを検討したりしています。

皆さん、互いの仕事ぶりはイメージできましたか。

西村

押田さんは設計会社のCM部で、どのような業務の進められ方をしているのでしょうか。

押田

いま皆さんから業務内容を聞く限り、そんなに大きな違いはないと感じました。当社のCM部の中には、CMrとして入社した人と、意匠設計者や設備設計者として実務を行ってきた人の両者がいます。また、社内の設計・監理部門の設計者がCMプロジェクトのプロジェクトメンバーに加わり、基本計画の作成や設計段階のレビューを行っているところが特徴なのかもしれません。

仕事のやりがいと課題

どんなときに仕事のやりがいを感じていますか。
一方で課題だと感じていることを、それぞれ教えてください

吉本

私は、あまりCMはこれだということを決めないほうがいいと考えています。CMは建設プロジェクトでは大事な役割ではありますが、個人的にはあまりクリエイティブではないと思っていて、CMrとしてではなく自分がやりたいことを投影できるとやりがいになると考えます。課題は、実際にそれができているのかというところです。うまくものごとが回っているとOKと捉えてしまいがちですが、そうありたくないというところがあります。また、CMは設計業務をするわけではありませんから、今まで学んだ設計のノウハウや最先端の技術をどう維持し更新していくかは、CM会社にとって結構重要なことだと思います。それを人で解決すべきなのか、何らかの方法で解決すべきなのか、そういう課題を常に持っている業界なのかと思います。

西村

企画段階に参画しますと建設プロジェクトというよりも事業に大きく関わっているという実感があり、これがあったほうがいい、こうやるべき、もしくはやらないほうが良いということを共に考えられるのがCMrのやりがいの1つだと感じます。つまり設計者でも施工者でもないCMrだからこそ事業に対する純粋なメリットが伝えられるところにやりがいを感じています。一方、CMrの役割が浸透していなくて、単に委託者だとか外注だという扱いを受ける場合もあります。限られた情報しかいただけなかったり、この範囲だけ教えてくれればいいということで仕事をいただいてしまうと、どうしても事業やプロジェクトという大きな視野でプロジェクトを回せないジレンマを感じるときもあります。

押田

私はお客様にとって信頼のできる後輩のように思っていただきたいです。お客様が困った時にすぐに電話をいただけるような存在になれたのではと思ったときにやりがいを感じます。いただいた相談事がたとえ建設に直接関係のないことでも、できることであれば力になりたいです。社内のノウハウでどうにかできるものであれば、社内の誰かに聞いて解決するのですが、それだけではできない場合、当社はグループ会社がありますので、例えば不動産開発や建物管理のノウハウについては話を聞きに行けます。ただそれ以外のことがあったときに、もっといろいろな人に聞けるような自分なりのネットワークを持ちたい、それが今後の課題です。

時田

私がやりがいを感じるのは、企画から維持管理の段階まで建築技術者として幅広く参加できることです。私が設計出身だから思うことなのかもしれませんが、CMrとして他分野の人と話をする場合は、あまりマニアックになり過ぎず、広い意見交換ができると感じています。設計の仕事をしていた時は、私の場合は日々の設計業務のことしかわからない人間になってしまうのではないかという危惧がありました。でもCMという広い視点で事業を見る業界に入ったおかげで、不動産の話や経済・社会の話にも強制的に頭が向くようになっており、そこがとても充実していると思っています。半面、自分の持っている建築設計の知識を発揮できる機会が、現状の仕事の中では限定的になってしまっている一面もあります。私はPMではなくてCMを業務としてやることが多いので、やはり建築技術者・建設技術者の面は大事にしていった方がいいと思っています。それが課題です。