CM選奨2026

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CM導入にいたる歴史

第二次大戦中の米国におけるマンハッタン計画や戦後のアポロ計画は、プロジェクトをマネジメントの対象とするプロジェクト・マネジメント(PM)の有用性を明らかにしました。そのためすぐに、PMは手法として確立されていきます。

1960年代には、PM手法は建設プロジェクトにおいてもCM方式として応用されるようになりました。

1970年代になると、米国では民間建設工事にCM方式が定着していきます。日本では、高度経済成長期を迎え、建築においてもそれまでの職人主体の建築生産からプレファブ部材や工法へ、あるいは生産の分業化など工業化の波が押し寄せる状況でCM方式への関心が一時的に高まりました。

しかし、当時の米国のCMは契約のマネジメントの側面も強く、設計でも施工でもないCMという独自の職能への抵抗感から、CMは日本の契約慣行になじまないという考え方が主流となっていたようです。

しかし、1980年代、日本がバブル期を迎えると急激に大型化、複雑化した建設プロジェクトに効率的に対応していくためにCM方式への関心が再び高まります。

そして1990年代はじめになると、巨額の貿易赤字を抱える米国から、建設市場参入のための強い圧力がかかります。その1つとして日本政府にもCM方式導入が迫られ、1995年には、日本政府は建設産業政策大綱においてCM方式の導入検討を言及することとなります。

一方で、設計事務所やゼネコンは、バブル期以前よりCM方式の研究を進めていましたが、1990年代後半、バブル崩壊後の社会経済の姿が見え始めたころから、外資系プロジェクトや民間プロジェクトを対象に実際にCMに取り組む企業が生まれてきます。

CMの導入には主に米国からの外圧が大きな役割を果たしました。しかし、日本の契約慣行や建設生産構造に合わせた日本型のCM方式を短期間で準備し、円滑な導入を実現した陰には、1970年代から継続的に米国での動向に着目してきた歴史があることも忘れるべきではないでしょう。

CMの沿革
CMrオピニオン

CMrにとってAIは敵か味方か

株式会社山下PMC
大阪事務所長
杉本 憲祐

株式会社山下PMC 大阪事務所長 杉本 憲祐AIと聞くと便利なツールと感じる人もいれば、CMrの存続に脅威と感じる人もいるかも知れません。そこでAIの普及により予想されるCM業務の未来を、当のAIに聞いてみました。すると、今後は定型的で単純な業務がAIにより自動化され「管理業務の減少」が進む一方、AIでは代替できない価値判断が必要とされるようになる、そしてCM業務の役割は「戦略的マネジメント」へとシフトしていき、CMrは人間にしかできない高度な判断・調整・創造的業務に専念する時代が到来する、との回答でした。

なかなかシビアな回答でしたが重要なのは、AIを脅威ではなく強力なパートナーとして捉えれば、自身の専門性を深化させることができるという点だと思います。

完全オーダーメイドの建設業界は、他産業と比べてDX推進や合理化が進みにくく、人材不足や高コスト体質はなかなか解消しない状態が続きそうです。しかし、CM業務はAIに侵食されやすい部分があるとはいえ、逆に言うと恩恵を受けやすい業態でもあり、今後の建設業界を変えていき好循環を促す良いポジションにあると言えるかもしれません。

CMrは建設産業の「頭脳」として機能すべき重要な役割を担っています。しかし現状ではまだCM業務の普及や法の整備も発展途上で、本来のポテンシャルをまだまだ発揮できていない側面もあります。

人手不足・働き方改革・DX推進といった外部圧力が、否応なく業界を変えている今が変革の好機です。この波に乗り、CMrが刻々と成長するAIを味方につけ、真にプロフェッショナルとして認められる環境を作ることが、CM業界の発展、さらには建設業界全体の発展につながるのではないでしょうか。と、AIも言っていました(笑)。

プロジェクトレポート

projectバンヤンツリー東山・京都プロジェクト

規制だらけの敷地課題をクリアし、
京都の魅力を発信する初進出ブランドのホテルを実現

  • ポイント1 発想の転換でネガティブな条件からも付加価値を創出し、事業収益性を向上
  • ポイント2 CMrとホテルPMの一体推進により、事業者と運営者の双方に踏み込んだ支援
佐藤 智香
  • 株式会社山下PMC管理統括本部 経営戦略本部 知財・AI開発部
    チーフプロジェクトマネジャー
    佐藤 智香

テーマ1発注者がCMrに求めたことは?

 計画地の霊山地区は、京都を代表する観光名所である東山の山麓にあり、市街地を一望できる絶好のロケーションに位置している。同時に、周辺には高台寺・八坂神社・清水寺などの歴史的建築物が点在しており、京都の景観形成上も重要なエリアとなっているため、美観地区、風致地区等の開発上の厳しい各種制限がある開発難易度の高い土地であった。また、敷地の一部は土砂災害特別警戒区域にも指定されており、開発行為への慎重な対応が求められた。計画するホテルは、独創的なデザインと高品質のサービスで、ハイエンド層をターゲットとしたラグジュアリーブランドとして世界に展開していたが、日本では初進出の案件であった。
 プロジェクトの成功に向けて事業者から、①東山の懐、高台寺に近接する計画地の事業ポテンシャルを最大限に引き出すこと、②魅力ある商品企画により事業性を高めること、③霊的な土地の開発に対する理解と、厳しい法令制限の解決を得ること、④日本初進出の外資系ブランドを円滑に導入すること、が求められた。特に、事業者と運営者の意思決定のタイミングとクリティカルパスが異なるため、双方の要求を統合したマネジメントが不可欠であった。

CMrオピニオン

自分の考えるCMrとは

日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社田中 淳

日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社 田中 淳自分は大学卒業後、設計事務所にて意匠設計に18年間、ディベロッパーにて不動産開発に2年間従事し、2019年より現職に就いている。CMrとしては今年で8年目を迎えるにあたり、改めて「CMrの仕事とは何か」を考えてみたい。 C M  自分は大学卒業後、設計事務所にて意匠設計に18年間、ディベロッパーにて不動産開発に2年間従事し、2019年より現職に就いている。CMrとしては今年で8年目を迎えるにあたり、改めて「CMrの仕事とは何か」を考えてみたい。

CMrとして従事するにあたり、弊社は「四方よし」を理念として掲げている。これは、近江商人の「三方よし」に「働き手よし」を加えた独自の考え方である。顧客(得意先)、仕入先、社会(世間・株主)、そして自社の従業員(働き手)という四者すべてに良い影響を与える事業活動を通じて、社会課題の解決と企業価値の向上を目指す姿勢を示している。

設計事務所で働いていた当時は、経済的な社会構造により「一方よし」とでも呼ぶべき状態と感じていたが、昨今の社会構造では、供給過多や働き手不足などにより経済活動の在り方は一変、買い手市場とも呼べる状況とも思える。そのため、「四方よし」の考えは時代にも即していると感じている。

そのうえで、「自分なりのCMrとしての色」を考えた結果、「姿の見えないCMr」というイメージに行き着いた。自分としては消極的な発想ではなく、「積極的な受け身」として前向きに捉えている。

プロジェクトを推進していく過程では、さまざまな課題が生じる。マネジメント会社としては「課題を解決していく」と言いたいところだが、実際に解決をするのは「三方」の皆さまである。では、CMrである自分は何をするのか。表舞台で主役を張ることはなく、裏方に徹し、「三方」が気持ちよく仕事に集中できる環境を整えること。ひたすら壁打ちの相手となり、対話を重ねていく中で課題解決に向けて導いていくことが、CMrのあるべき姿であり、結果的に「四方よし」に繋がるのではないかと考えている。

プロジェクトレポート

projectバンヤンツリー東山・京都プロジェクト

規制だらけの敷地課題をクリアし、
京都の魅力を発信する初進出ブランドのホテルを実現

  • ポイント1 発想の転換でネガティブな条件からも付加価値を創出し、事業収益性を向上
  • ポイント2 CMrとホテルPMの一体推進により、事業者と運営者の双方に踏み込んだ支援
佐藤 智香
  • 株式会社山下PMC管理統括本部 経営戦略本部 知財・AI開発部
    チーフプロジェクトマネジャー
    佐藤 智香

テーマ1発注者がCMrに求めたことは?

 計画地の霊山地区は、京都を代表する観光名所である東山の山麓にあり、市街地を一望できる絶好のロケーションに位置している。同時に、周辺には高台寺・八坂神社・清水寺などの歴史的建築物が点在しており、京都の景観形成上も重要なエリアとなっているため、美観地区、風致地区等の開発上の厳しい各種制限がある開発難易度の高い土地であった。また、敷地の一部は土砂災害特別警戒区域にも指定されており、開発行為への慎重な対応が求められた。計画するホテルは、独創的なデザインと高品質のサービスで、ハイエンド層をターゲットとしたラグジュアリーブランドとして世界に展開していたが、日本では初進出の案件であった。
 プロジェクトの成功に向けて事業者から、①東山の懐、高台寺に近接する計画地の事業ポテンシャルを最大限に引き出すこと、②魅力ある商品企画により事業性を高めること、③霊的な土地の開発に対する理解と、厳しい法令制限の解決を得ること、④日本初進出の外資系ブランドを円滑に導入すること、が求められた。特に、事業者と運営者の意思決定のタイミングとクリティカルパスが異なるため、双方の要求を統合したマネジメントが不可欠であった。

テーマ2CMrが立てた目標は?

 多くの難題を解決すべく、「チームビルディング」と「リレーション」に着目し、4つの推進目標を設定した。
①徹底的な敷地分析によりポテンシャルを発掘する
②コンセプトワードの早期提示による、多数の専門家の検討の方向づけをする
③予期せぬ課題に即応できるフレキシブルなプロジェクト運営体制とする
④ホテルPMとCMrの一体推進により事業者と運営者の双方に、踏み込んだ支援をする

テーマ3CMrがとった手法は?

1:敷地の徹底分析により、敷地と立地の制約条件とポテンシャルを全体の計画方針に反映。伝統的な「和」の要素の取り込み、京都の街並みへの調和に向けて関係者の検討を集約させる

 京都の街並み全体を俯瞰した広域からの「空間的分析」と、歴史的背景に った「時間的分析」により、土地のポテンシャルを客観的に再評価した。景観シミュレーションや文献調査など専門家による分析をCMr が具体的なアクションに落とし込むことで、「自然環境」「起伏豊かな地形」「文化」に寄り添った総合的な計画方針を策定した。竹林整備、樹木保全、既存石垣塀の安全性対策、苔の再現などの景観形成に有効な対策においては、総合的な検証プロセスを促し、ホテル開業までの長期的な視点で推進した。
 デザインプロセスにおいては、プロジェクトの初期段階に、事業者から「幽玄」というコンセプトワードを提示することを提案した。参画する多数の専門家に共通の軸を示すことで、早期からの検討の質を向上させた。CMr がハブとなり定期的なワークショップを主宰し、事業者と運営者を交えた「ホテルのあるべき姿」や「京都東山にふさわしい建築」の議論の場を提供することで、「温泉旅館とホテルの融合」「能舞台」など、差別化につながる魅力ある商品計画が引き出された。

外観
外観
能舞台
能舞台
客室
客室
ホテル運営者との調整フロー
ホテル運営者との調整フロー
CMrとホテルPMの業務スコープ
CMrとホテルPMの業務スコープ

2:規制と事業性のすり合わせー発想の転換による価値創造

 計画地の最大の課題は、敷地にかかる多くの制限をクリアして建物高さを10mに抑えながら、ホテルの施設要件を満たすことにあった。敷地の一部は土砂災害特別警戒区域にも指定されており、開発許可が想定されたが、「京都固有の風景を守るため地形を変更しない」「近隣住民への配慮から工事期間は長期化しない」方針から、開発非該当を前提に関係者の合意形成を図った。
 建築は高低差のある敷地形状を活かし3棟の分棟配置としたが、面積がホテルの要求する施設要件に不足したため、「発想の転換による商品計画の考え方」を提案した。ランドスケープ、本来はゲストが通行しないエリアや裏動線など、建築以外のエリアやネガティブな条件からも付加価値を創出して、ホテルのフィーチャー・見せ場とした。ホテルの特徴となった能舞台は、竹林の景が透けて見えるルーバーデザインとすることにより、ホテルの背面としていたエリアの活用につながった。避難経路の大階段もアートガーデンの一部となるようにデザインして見せ場とした。商品計画の検討はホテルPMが事業者と運営者を支援し、具現化策の技術的検証はCMr が各専門家を取りまとめて推進した。

3:ECI方式の発注と、CMr・ホテルPMの一体推進による総合的課題解決

 コア業務(QCDSE管理)を担うCMr と、通常のCMのフレームに当てはまらないホテル開発特有の業務は、外資系ホテル開発に熟知したPMが担い一体的に推進することで、事業者と運営者の双方に踏み込んだ支援を行った。テーマごとにCMrが主導する実務分科会を設置し、各専門家との事前調整を行うことで、運営者への承認プロセスにおける手戻りを防止した。
 スケジュールマネジメントとしては、モックアップ等の重要クリティカルの管理のほか、竣工から開業までをCMrがハンドリングし、本工事・別途工事の隔てなく一括して調整を行った。事業者と運営者間のハンドオーバーを第三者性のあるCMrが主導することで、是正・追加工事の判断と手配を円滑にし、日本初進出のホテルの開業を軌道に乗せる支援を行った。
 発注方式は、敷地の施工難易度の高さを考慮し、ECI方式での施工者選定を提案。実施設計段階から施工者による見積精査を行うことでVE/CDの採否も現実感・納得感のある判断となり、予算目標金額を達成した。特筆すべきは、施工者から提案された「 回路」の計画である。狭隘な高台寺参道への工事車両の進入を避けて仮設通路を設けたことにより、観光地と寺社へ配慮するという画期的な工事計画を、充分な技術とコスト検証期間を以って実現できた。

テーマ4発注者の評価は?

 世界で展開してきたバンヤンツリーとは趣を大きく変えた「温泉旅館とホテルの融合」と「能舞台」で、先行する競合ホテルと一線を画した、高級ブランドの初進出を実現できた。多くの旅行・建築雑誌にも掲載され、国内及びインバウンドに好評を得ている。事業者と運営者からは「数々の困難を乗り越えたホテルづくりのパートナー」として高く評価を頂くとともに、プロジェクト関係者からは「難解なプロジェクトこそまた一緒に」と、CMr の業務の成果に信頼を頂くことができた。

プロジェクトデータ

<プロジェクト情報>

  • 【名 称】(仮称)京都りょうぜんホテル新築計画
  • 【所在地】京都府京都市東山区
  • 【種 別】新築/非住宅建築
  • 【CM業務委託者】合同会社りょうぜん開発
  • 【CMr】株式会社山下PMC
  • 【CM業務契約期間】2018年10月~2024年6月
  • 【CMrの選定方法】特命
  • 【CMrの参画時期】事業構想段階、基本計画段階、基本設計段階、実施設計段階、工事発注段階、工事段階、完成後
  • 【設計・施工の発注形式】設計・施工分離
  • 【設計者の選定方法】プロポーザル、資質評価
  • 【施工者の選定方法】総合評価(ECI方式)
  • 【設計・施工者の選定時期】基本設計完了時

<CM業務内容>

  • 【全般】発注者の目標・要求の確認と更新、プロジェクトの推進と管理、設計者・施工者・監理者の選定・発注、プロジェクト構成員の役割分担の明確化と更新、プロジェクト情報管理、プロジェクトにおけるリスクについて説明、CM業務報告書の作成、その他(ホテルオペレーターとの技術的内容の協議支援と調整業務全般、ホテル開業までのハンドオーバーに関する調整支援)
  • 【事業構想・基本計画】事業構想、基本計画、その他(ホテルオペレーターとの協議・調整支援、ブラ ンド基準の確認と調整、商品計画立案支援)
  • 【基本設計でのマネジメント】基本設計の方針検討、基本設計への支援と確認、基本設計図書等の内容 の確認、その他(ホテルオペレーターとの協議・調整、各種ワークショップの開催等)(ECI施工者選定支援)
  • 【実施設計でのマネジメント】実施設計の方針検討、実施設計への支援と確認、実施設計図書等の内容の確認、その他(ホテルオペレーターとの協議・調整、各種ワークショップの開催等)
  • 【施工でのマネジメント】工事施工準備、工事施工、竣工・引渡し、その他(モックアップ製作支援及び検査、別途工事調整支援、近隣対応支援)
  • 【完成後のマネジメント】不具合・瑕疵への対応、引渡し後のアフターケア・運営維持管理、その他(別途工事調整支援、ホテル開業に向けた各種検査及び調整、ハンドオーバーに関する調整支援)