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巻頭言

CMガイドブックとCM業務委託書の改訂について

常務理事 CM業務委託書・解説書改訂委員会
委員長
高草 大次郎

会長就任に際して日本CM協会では、本年2月に「CMガイドブック第4版」を発刊いたしました。2022年11月の編集委員会発足以降、47回にわたる委員会での議論と、多くの皆様のご協力を得て、本書を取りまとめることができました。編集委員の一人として、この場を借りてご協力くださったすべての皆様に、心より御礼申し上げます。
さて、CMガイドブックは、2004年の初版以来、日本におけるCMの全体像を示す唯一の教本として改訂を重ねてきました。初版では分離発注を前提にした発注者支援の枠組みを示し、2011年の改訂版では一括発注にも対応した内容としました。さらに、第3版(2017年)では発注方式の検討および選定支援がCMrの重要な役割として位置付けられています。そして今回の第4版は、これらの流れを継承しつつ、建設事業を取り巻く社会的環境の変化を踏まえ、CMの対象領域の拡張と業務プロセスの再整理を図っています。

大きな改訂点としては、第3章に「運営・管理マネジメント」と「環境マネジメント」を新たに加えました。地方自治体におけるPPP導入の促進やESG投資の浸透など、施設の長期運営を見据えた事業の重要性などを背景に、CMrが担うべき役割が設計・施工段階にとどまらず、運営・管理や環境へと広がっている現状をふまえた内容となっています。またプロジェクト実施方式については、第3版では設計施工分離方式、DB方式、ECI方式の3方式であったものが、PFI、施設管理付設計施工一括方式、指定管理者制度を追加し、CMrが検討する対象となる方式を拡張しました。

さらに、CM業務計画書とプロジェクト推進計画書をCM業務の「背骨」と位置付け、両者が連動して事業の共通認識の基盤を形成することを明示しました。発注者が建築事業に込めた想いとその実現を支援するCMrの役割を明らかにし、多くのプロジェクト関係者が関与する建築事業において、CM業務計画書とプロジェクト推進計画書が事業全体を貫くぶれない軸として再定義されました。あわせて、事業構想策定支援や基本計画策定がCMrの業務項目の一つとして示され、それらの業務に関する手順や構成例を示し、近年増加する事業の早期段階からのCM参画への実務的指針を提示しています。

一方で、役割が広がる今こそ、標準業務の共通理解が必要です。その基礎となるCM業務委託書は、CMガイドブック第4版を踏まえ、現在改訂作業が進められています。地方公共団体が発注するCM業務において、業務仕様をCM業務委託書に準拠する例も多く、その重要性は今後も一層高まるといえます。

CMガイドブックとCM業務委託書という「応用」と「基礎」を確かな拠り所とし、絶えず変化する社会の中で、CMrが建設事業を支える専門家として、その力がより発揮されることを願っております。

CMガイドブックとCM業務委託書の包含関係のイメージ(CMガイドブック第4版328p)
CMガイドブックとCM業務委託書の包含関係のイメージ
(CMガイドブック第4版328p)