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巻頭言

今こそCM業務に取組むべき時

理事(広報グループ担当)兼普及委員
株式会社建設エンジニアリング 代表取締役社長
宇津橋 喜禎

理事(広報グループ担当)兼普及委員 株式会社建設エンジニアリング 代表取締役社長 宇津橋 喜禎昨年度に理事を拝命し、現在は広報グループ(広報委員会、機関誌編集委員会、IT・デジタル委員会)の担当理事、また普及委員会委員として活動しております。実務と協会活動をとおし、私が日頃感じていることを述べさせて頂ければと思います。

 私の略歴からお話したいと思います。2001年4月に父の経営する当社に入社しましたが、前職は損害保険会社の営業でした。リテール営業と企業営業の現場を交互に4拠点14年間経験しました。多分、当協会員の中ではかなり異色の経歴だと思います。保険代理店やお客様にお世話になりながら数字に追われる日々でしたが、学び多き時間を経験できたと思います。商取引とは何か、お客様とは何かを実体験の中で学べた貴重な時間であり、私の大きな財産です。

 

転職後に実務をとおして強く感じたことは、 「違和感」です。建設プロジェクトにおける主役 は当然発注者であると思います。しかし、会議 や打合せをとおし、施工者や設計者が多数の 専門用語を素人の発注者の前で話し合う場面 に何度か出合い、分厚い見積書の数ページし か説明しない施工者を何度か見て、大きな「違 和感」を感じました。この業界、大きく言えば建 設業界は、非常に専門性が高く優れた技術を 有しているにも関わらず、「技術志向」が強いが 故に「顧客志向」は弱いと感じました。その時期に出会ったのがコンストラクション・マネジメン トです。保険という見えない商品を提案営業し ていた私にとって、CMという「顧客のための提 案」は非常に取組みやすいものでした。まもな く日本CM協会の存在を知り入会したことは自 然の流れだったと思います。そして、入会して まず個人会員となり、大手社の皆様と交流し CMの学びを深めたことは私の経営する当社 の成長に大いに貢献したと心から思います。

 国土交通省より2024年9月に「公共事業におけるピュア型CM方式活用実態調査」の最新版が公開されました。建築および土木のCM方式導入の日本全国での増加は明らかです。日本CM協会の最大ミッション「CMの普及」は進んでいるといえます。しかし、実態は各都道府県内の実績量の差は大きく、実績が全くない自治体も多数あります。主たる要因の一つが、CMに取組む会社が圧倒的に少ないということであると思います。特に地方都市が顕著です。現代は、物価の異常な高騰に加え、建設業界の働き方改革他法改正もあり、様々な発注者が頭を悩ましている時代であるといえます。今こそ真の「顧客志向」に基づき、CM業務に取組むべきです。それは特に建設業界に関わる中小企業にとって大いなる自社の発展に繋がることでしょう。少しでも多くの方々が当協会の仲間となり、共にCMを学び、普及の担い手となって活躍頂くことを心から願う次第です。

CMrオピニオン

四方よしのCMを目指して

株式会社ヤジルシ建築設計事務所
代表取締役
山田 祐希

独立してCMという業務を行うにあたり、どういった姿勢で業務にあたるかは悶々と悩み、模索する日々が続いている。

私の前職は組織設計の設計者であったが、周囲のCMに対するイメージは頗る悪いものであった。「あら捜しでつるし上げて点数稼ぎ」「ちゃぶ台返しで自分の爪痕を強引に残す」「現実にそぐわない提案を行い始末は他任せ」と、発注者の顔色伺いや得点稼ぎだけの責任感のない行動への不信感であり、そういった印象を持つ方は少なくない。

ただ、僕自身のCMへの印象は異なるものであった。とあるプロジェクトで設計者側としてCMと協業することがあったが、そこでCMはコスト管理は勿論のこと「施主のイシューの掘り下げ」「設計者、施工者、デザイナーの関係調整」「各位相互に言いづらい事の説明」等、プロジェクトが施主の望む最終形に潤滑に向かう様に体を張って推進に努めていた。

その結果、施主だけでなく施工者・設計者各位の信頼関係構築ができていた。勿論、衝突することもあったが、最後は大団円で完成を迎え、今なお施主含めた関係者で同窓会を行える「戦友」にまでなった。

知人が「CMとは三方よしではなく、四方よしでないといけない。」と述べていたが、まさしくその通りで、「売り手」「買い手」「世間」「未来」の中心に立ち、四方位よしでプロジェクトを捌けるかがCMに求められており、前述の様な悪評を打ち払い各位からの信頼を勝ち得ていく必要があると考える。

CMが果たすべき役割を果たせば四方よしの素晴らしい成果を残せる実例を知っているからこそ、それを目指したい。

四方よしを目指し、CMとしてのバランス感や立ち振る舞いを自問自答しながら模索する日々が続いている。

CMrオピニオン

設備CMrとしての目線

阪急コンストラクション・マネジメント株式会社
東京本店
高嶋 優一郎

設備設計者としてこれまで総合設計事務所に勤務していましたが、4年前にCM専門会社へ転職し、設備担当として設計・工事の監修、コスト確認等、試行錯誤しながらCM業務を行っています。

私が携わっている案件では発注者側が建築に詳しい方が少なく、日常的に利用する建物や設備についての理解はあっても詳細までわからないといった発注者が多い状況です。このようなプロジェクトではCMrとして、専門的な分野の知識はもちろんのこと、各CMrは建築・電気・設備と分けて考えるのではなく、建物全体の状況を把握しつつ、発注者へわかりやすい適切な助言を行っていく総合的な目線を持つことが必要であると感じています。

まだCMrとして関わったプロジェクトは少ないものの、誰の何の為の施設なのか、どのように利用したいのか、目標とする施設へ向け、どこにコストをかけ、どのような設備が必要になるのかという検討と説明、発注者の意図を配慮したもの提案するという、本来、設計業務の中で行うべき事が、設計者から発注者へ十分に伝えられていない状況が見受けられます。設備CMrとして、プロジェクト全体を俯瞰して、不足している内容に対して、何が適切であるか、何を準備したらよいか、プロジェクトの成功のため自身の専門知識を役立てられるよう設計者への助言も必要と考えています。

私自身設計事務所出身ということもあり、どうしても設備設計の内容を厳しい目で見ることが多いですが、最終的に発注者が望む建物となるよう、意見交換を行える環境を作り、プロジェクトメンバー全体で協力していけるよう心がけていきたいと思っています。

プロジェクトレポート

projectAJINOMOTO NEW FACTORY PROJECT

ダイバーシティにおけるPMの可能性を開拓

  • ポイント1 多様な背景のローカルスタッフを巻き込んでのプロジェクト推進支援
  • ポイント2 ビッグプロジェクトでの適切なコスト&スケジュールマネジメント
森野祐介
船元輝男
  • 株式会社プラスPM 取締役森野 祐介
  • 株式会社プラスPM 取締役船元 輝男

テーマ1発注者がCMrに求めたことは?

ダイバーシティでチームを牽引し、高い品質と適切なコスト&スケジュールの実現

発注者のAJINOMOTO ( MALAYSIA ) BERHADは、味の素株式会社のマレーシアにある連結子会社であり、「顧客中心のグローバルなハラル食品企業」である。マレーシアは様々な人種・宗教が混在して一つの国として成立しているダイバーシティ(図1)であり、この国で事業を行う場合、多様性を認め、尊重することが何よりも求められる。今回発注者が移転新築を行った工場も例外ではなく、従業員全員が快適に働ける施設にするために数多くのことへ配慮する必要があった。さらに、食品工場はマレーシアの国教であるイスラム教のハラルに準拠する必要があり、唯一の公式ハラル認証機関であるマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)からの認証を取得しなければならない。しかし、JAKIMのハラル認証は他国よりも条件が厳しいため、大規模な工場で認証を得るには緻密な計画が必要であった。

図1 マレーシアにおける人種・宗教の比率

また、工場の規模が約53,200m²と非常に大きく、定められた予算と稼働時期を遵守するには高いプロジェクトマネジメント力が必要とされた。 それらの事情を踏まえて、発注者は専門家の支援が必要と考え、CMrを採用した。そのためCMrには、マレーシアと日本の建築知識に加え、マレーシアの慣習への精通と様々な背景を持った発注者組織内の関係者全員の要望を引き出し、まとめ、施設へと反映できるグローバルなチームマネジメント力が求められた。加えて、「世界中の人々がいつまでも楽しく笑顔で食卓を囲めるように」という企業としての想いから、通常マレーシアでは日本より軽視されがちな安全・環境対策についても厳しいマネジメントを要求された。...

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